子どもの歯並びが悪い
子どもの歯並びが悪い症状のことを歯科用語で「不正咬合(ふせいこうごう)」といいます。歯並びが悪いと、適切な歯磨きが難しくなるため、むし歯や歯周病、口臭などのリスクが高まります。乳歯が不正咬合の場合、永久歯も不正咬合になる可能性が高く、大人になってから矯正治療を受ける方がたくさんいらっしゃいます。
歯並びが悪くなる原因
不正咬合の原因は、先天的な要因である遺伝的要因と、癖や生活習慣などで起こる環境要因に分類されます。
遺伝的要因
先天的な下記のような要因があると、歯並びが悪くなる可能性があります。
- 両親の歯並びが悪い
- 通常よりも歯の本数が多い
- 通常よりも歯の本数が少ない
- 2本の歯が癒合している
上記に当てはまらなくても、環境要因と重なることで歯並びが悪くなる場合があります。
環境要因
普段の癖や生活習慣が歯並びを悪くする場合があります。例えば、次のような要因が挙げられます。
舌の癖
舌は上顎におさまっているのが通常であり、歯に触れることはありません。しかし、舌で前歯を押したり前歯の間から舌を出したりすると、歯並びが悪くなる恐れがあります。また、飲み込むときに舌を突き出す癖も同様です。このような舌の悪い癖を舌癖(ぜつへき)といい、早期の改善を目指すことが大切です。
爪を噛む
爪を噛むと歯や歯茎に強い力が加わり、前歯が変形したり歯並びが変化したりする場合があります。
唇を噛む・吸う
下唇を噛む癖があると、上の前歯が前に傾くと共に、下の前歯が内側に傾きやすくなるため、出っ歯になるリスクが高まります。反対に、上唇を噛む場合は受け口になるリスクが高まるのです。唇を噛んだり吸ったりする癖は早期に改善する必要があります。
口呼吸
通常、舌は上顎にくっついているのですが、口呼吸が癖になっていると舌が下顎にくっつくようになります。鼻詰まりや喉の病気などが原因で口呼吸になると、舌の位置に問題が生じて上顎の成長が悪くなる恐れがあります。
頬杖
頬杖をつくと、顎や歯に過度な力が加わります。その状況が長く続くと顎が左右にずれて歯並び・噛み合わせが悪くなる恐れがあります。
片側噛
食事の際に片側ばかりで噛む癖があると、顎の骨がゆがむ恐れがあります。その結果、歯並びや噛み合わせも悪くなります。
乳歯の早期脱落
乳歯を怪我やむし歯などで早期に失うと、両側の歯が倒れてきて永久歯の生え方に悪影響を及ぼす恐れがあります。
柔らかいものばかり食べる
柔らかいものばかり食べると、顎に十分な刺激が伝わらないため顎の発育に支障をきたします。その結果、永久歯がきれいに並ぶためのスペースが不足し、歯並びが悪くなります。
姿勢
猫背のように悪い姿勢を続けると、次第に身体がゆがみます。その結果、顎の位置がずれて噛み合わせが悪くなります。
悪い歯並びの原因を改善するためには
歯並びが悪い場合は、すぐにでも矯正治療を受けた方がよいと考える方は多いのではないでしょうか。実は、歯並びを悪化させる要因である悪い癖・習慣を改善し、お口周りの機能を整えることで、歯並びの悪化を防げる可能性があります。
例えば、指しゃぶりは歯並びや噛み合わせを悪くする要因ですが、3歳頃までの指しゃぶりは問題ありません。しかし、3歳以上になっても指しゃぶりを続けている場合は、改善を目指した方がよいでしょう。このような悪い癖を改善するために、指しゃぶり防止用のフィンガーキャップやマウスピース型装置などを使用するのも1つの方法です。
さらに、MFT(口腔筋機能療法)といい、お口周りの筋肉を鍛えて健全な歯並びへ導く方法もあります。食べる(咀嚼)、飲む(嚥下)、発音、呼吸、舌の位置、口唇の位置などを改善するために、お口周りの筋肉を鍛えます。MFT(口腔筋機能療法)の種類は次のとおりです。
スポット
舌先を正しい位置に置くことを習慣づけて、舌の位置を改善するトレーニング
ポッピング
舌を上に持ち上げる力を鍛えるトレーニング。舌を正しい位置に置いた状態で舌全体を上顎に吸着させ、一気に下におろして「ポンッ」という音を鳴らす
他にも、さまざまなトレーニング方法があり、お子さまに合ったトレーニングを組み合わせます。
まずはご相談ください
歯並びや噛み合わせの悪化を招く癖は、できるだけ早く気づいて改善を目指すことが重要です。子どもの頃に悪い癖や習慣を改善することで、永久歯がきれいに並ぶために必要な土台を整えることができます。まずは、お子さまの歯並びや噛み合わせについて歯科医院に相談することをおすすめします。